🍇ワインを造ろう!4月

– ぶどう観察日記 –

2009年のジュネーブ日本倶楽部(JCG)設立10周年記念にワインクラブが企画しました!


2009年4月25日(土) 快晴、穏やかな春の一日

3月のはじめての観察会から1ヵ月、メンバーの日頃の行いがとても良かったのでしょう(!)、今日も快晴に恵まれました。気温は18度。風も無く、とても穏やかな観察日和となりました。
農場主のロシェさんのお宅に到着すると、建物の正面に見事なフジの花が咲いていました。後から伺ってみると、1本の木が30メートルも建物に沿って伸びており、50年ほど前からあるとのこと。根に近い部分と、先端の部分では花の咲く時期も微妙にずれるそうです。それにしても、見事でした!

ロシェさん宅の見事なフジの花 

真新しい畑に到着して、今日の観察会の開始です。一面に若いぶどうの苗木が綺麗に植えられていました。
昨日植えたばかりだそうです。
前日に植えたばかりの苗木が並ぶ 接いだ部分をパラフィンで保護

そして、いよいよ接木の説明です。写真では見えづらいかも知れませんが、赤い部分は接いだ部分を寒さや乾燥から保護するパラフィンで、新芽は簡単にパラフィンを突き破って出てくるそうです。パラフィンをめくって中を見せてもらうと、まるでくるぶしのように太く連結された部分が見えます。
連結された部分の向かって下の部分が台木で、この農場ではアメリカ産のぶどうとフランス産のぶどうの混合種を使っているとか。病気に強く、上の部分に接がれたデリケートなぶどうを病害虫から守っています。接木の方法は、形がギリシャ文字のオメガに似ていることから、「オメガ式」と呼ばれるもので、ジグソーパズルのようにはめ込まれています。「ロレックス方式はないの?」とのメンバーからの質問が…。
この苗木は、1ヘクタールあたり1万株の割合で植付けされ、苗木同士の間隔は約80センチ、畝同士の間隔は約1メートル20センチ。植え時は、4月半ばから5月初めにかけてとのこと。土中の水分で事足りるため、畑の表面が乾いているように見えても散水の必要はないそうです。植樹1年目は支柱をたてる必要はありませんが、動物の侵入を防ぐ意味でたてる場合もあるそうです。
苗木の植え時は、4月半ばから5月初め... パラフィンをめくって中を観察 

続いて、大きな納屋に案内されてぶどう作りに使われる農業機械を見せて頂きました。まずは、ぶどうの木の下枝が伸びないように刈り取る機械だそうで、とても特殊なものだそうです。(①)下枝は、ぶどうの熟成に悪影響を及ぼすので葉が出てきたら落とす必要があるそうです。ぶどうの木自体を傷つけないため、高圧の空気で葉を吹き飛ばします。毎年、7月に使うものだそうです。
今度は成長したぶどうの木の葉や枝を切る機械です。(②)ぶどうの木に上から覆いかぶさるようにして水平方向に伸びた余分な葉や枝をカットしていきます。写真の機械は幾分か昔のもので、畝1つ分を処理するため、ぶどうの木が高くなると、どうしても機械の重心も上に上がるため、今でもたまに転倒事故を起こすそうです。最近のものは2つの畝を同時に処理するようになっており、横幅が広がった分、重心は安定し、安全に作業できるようになっています。
こちらの機械(③・④)は、苗木が若いときに、畝の両脇をスコップ状の機械で、ザクザクと掘っていくもので、雑草を掘り起こしたり、雨水の影響を小さくして苗木の成長を守るものだそうです。
ちょっと恐ろしい容貌の機械(⑤)は、事前剪定の機械だそうで、前回の観察会で人間の手で剪定を行うのを見せてもらいましたが、その前段階で苗木をはさみ、ザックリと切りそろえるものだそうです。
最後に見せて頂いたのは、芝刈り機(⑥)です。特徴は刈る芝の幅を調節できること。他にもまだまだ機械があるそうですが、稼働中だったり、農場どおしで貸し借りしたりしているそうなので、今後の観察会で、また紹介していただけるそうです。



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農場の入り口に戻って、待望の試飲会…の前に、ちょっとお勉強を。今回、ロシェさんにぶどうの種類(識別)のお話や、「クローン」のお話をお願いしたところ、しっかりと専門書を用意され、熱心に教えて頂きました。ぶどうの種類はとても大切で、どのような土壌に適合するのか、いつごろ植えて、どのように世話をして、いつごろまでに成熟するのかなど、何千種もあるぶどうをきちんと識別しなければなりません。
基本は、ぶどうの「葉」だそうで、「葉のタブがいくつあるか」「葉の周りのギザギザがどのくらいあるか」「葉の色(裏表で異なる)」「質感」などで判断しますが、どうしてもわからない時は、DNA鑑定を行うこともあるそうです。ぶどうは花が咲いてから100日後に収穫が出来るそうです。ぶどうの成熟のスピードは「シャスラ種」を基準とするそうで、これをもとに、早い・遅いと表現するのだそうです。
「クローン」については、ぶどうは種から育てると同じ遺伝子を持ったものに育たないため(雑種性)、接木をして増やす必要があるそうです。同じ親から生まれても、兄弟はそれぞれ違う特徴を持ってしまうことと似ているかもしれません。生産者にとっては、同じ遺伝子を持つぶどうを大量に収穫したい為、優秀な株(実がたくさんなる、甘い、寒さに強いなど)を選抜して、育成します。同じ畑でも、場所によって少しずつ株の特徴の差が出てくるそうで、これらをどのように取捨選択するかが、大切だそうです。

お待ちかねの試飲会です!
メンバーにはそれぞれワイン評価用紙が配られ、「外観」「香り」「味」と「総合点」について採点をお願いしました。白ワインは、こちらで作られている「Chasselas Peissy AOC」「Les MILLERANDS Chasselas Peissiy」「Aligoté Peissy」「Pinot Blanc Peissy AOC」「Pinot Gris Peissy AOC」「Sauvignon Blanc Genève AOC」「Chardonnay Peissy AOC」「Chardonnay Peissy AOC elevé en fût」の8種類。
皆さん、ロシェさんの説明を聞きながら、とても真剣にワインと向き合って採点していました。今回は白ワイン8種と赤ワイン8種の計16種類を試飲する予定でしたが、白ワイン8種を頂いたところで、すでに予定時間をオーバーしていたのと、かなりおいしく、春の陽気にも誘われて結構頂いてしまっていたので、メンバーの「冷静かつ沈着な」判断が怪しくなりつつあり、赤ワインは次回の観察会の楽しみに取っておくことになりました。
今回の試飲会の評価で、ワインクラブとしてJCGに提供するワインが決まることになります。

試飲の前にお勉強会 専門書を手に熱心に解説してくださるロシェさん 試飲したワインを評価する いよいよ、試飲会 

今回試飲したワイン

最後に
とても気持ちの良い、観察会でした。ロシェさんには本当にお世話になりっぱなしです。帰りがけに、気に入ったワインを買っていかれるメンバーもいて、みなさんニコニコ顔での解散となりました。次回も良いお天気になるといいですね。


4月の観察
今日は2回目の観察。
農場主のロシェさんもとてもフレンドリーにワイン作りを紹介してくれています。
今日のテーマは、「接木(つぎき)」、「ぶどう作りに使う農業機械」と「クローン」。
そしてお待ちかね(!)の、白ワイン試飲も行いました。


覚えた言葉
ぶどうの接木(つぎき)
接木とは、2個以上の植物体を、人為的に作った切断面で接着して、1つの個体とすること。このとき、上部にする植物体を穂木、下部にする植物体を台木といいます。通常、遺伝的に異なる部分から構成されている個体を作る技術として用いられますが、果樹等の育種年限の短縮化、接ぎ木雑種の育成などの目的で行われる場合もあります。国際花と緑の博覧会で展示されたトマピーナも接ぎ木により作られました。
 ぶどうの接木はフィロキセラ(和名ブドウネアブラムシ)の被害を防ぐことが主目的。もともと北アメリカ東部に生息していたのが、ぶどうの苗木について世界各地に広がり、19世紀後半にヨーロッパ各地のぶどう園を壊滅させたことで有名。この虫に寄生されたぶどうは衰弱枯死しますが、抵抗性のある台木に接木された株は被害を受けません。

(出典:Wikipedia等)


4月のぶどう畑

春の日差しを浴びて、等間隔に並んだぶどうの木